【第45話】あたり前力
言葉のスケッチ
今年になって気に入らない制作が続き気が付けば秋。
何が引っかかるのか掘り下げて行くと問題の根は深く解ける事は無かった。
そんな状態のまま夏の間に決めていた4年ぶりの帰郷の日がやってきた。
今回は細と二人特に予定らしい予定も立てず、父母の顔を見て何となく過ごした。
母の毎日の買い物に付き合い、日中は細と天草の景色を見て回り、夜は父と酒を交わす。
故郷での時間を終えアトリエに戻るとすんなり一枚の絵を描き上げる事が出来た。
私の中の引っかかりはすっかり消えて無くなっているし問題の本質は
制作にとって何があたり前の事なのかを見出す力とそれを認める心の在り方だという事を理解した。
どうしても解けない難問を数日のうちに洗い流してくれた両親は、
何となく交わした会話や表情の中に、あたり前力のお手本を見せてくれたのだろう。