物が在ると空間が歪む

物が存在すると空間が歪みます。
画家は物自体と空間そのものを同時に認識し
空間に発生している歪を解消した画面としなければなりません。

物、空間、歪み、の関係は存在論や物理学とも関連する項目ですが
画家は画面の中でその本質に迫る事が出来ます。

絵の中で空間の歪は「キワの部分」に集約されます。
目の前のテーブルにコップが置いてあるとして
普段の生活でコップやテーブルはそれぞれ問題になっても
コップとテーブルの境目が問題になることはありません。
ところが絵の中でコップやテーブル、またそれをとりまく空間を表現しようとした場合
コップ自体やテーブル自体の問題よりもむしろその境界の問題の方が大きいのです。
コップを追いかけることは同時にテーブルとの違いを明らかにすることでもあります。
それら問題が集約する場所がコップとテーブルのキワ(境目)です。
そこは無限が口を開けて待っている鬼の棲家です。

絵画制作は、芸術であるのみならず、同時に物理、科学であり哲学でもあります。
はじめに書いた、物が在ると空間が歪む は一生懸命制作する中で自然に気が付くはずです。

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