この世の中に発生したもう一つの宇宙

私は絵が見えて来る速度を大切にしている事は以前書いた通りです。
もう一つ大切にしているのが、鑑賞距離を選ばずに
良い状態で見る事が出来る様にすることです。

現実世界での物の在り方は、それを観ようとする人の距離の取り方
に応じて見える情報に変化がある事は昨日書きました。

では、絵の場合はどうでしょう。
或る絵が視野に入った時、その絵に惹かれたあなたは
より近づいて観ようとするでしょう。

魅力ある対象との距離を近づけたくなるのは
万象に対する人間の自然な行為ですが
遠くから気になった絵が、近づいてみても
何も魅力ある表情を見せなければガッカリです。

例えば、知り合い→友人→恋人 への変化の階段は、
そのまま魅力の階段であり、近づけばより魅力の増すものでなければなりません。
これはそのまま絵に対してもあてはまります。

私は遠くから近くまで、また最後は拡大鏡で見ても、
魅力ある情報が欠損しない様に描くことを大切にしています。
「魅力ある情報が欠損しない様に描くこと」とは
「絵の中の全要素が響き合い美な関係になっている事」

もうお気付きかと思いますが、この構造は自然界のそれと同じですし
より進化した形とも言えます。

「この世の中に発生したもう一つの宇宙」それが私の絵です。

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