画材から絵の部分へ
芸術論とひとりごと
画面のどこかをしっかり描写するとそこは視覚的な強さを持ち
鑑賞者が目を引き付けられる場所になります。
それは絵の具の色や鉛筆木炭の粉といった画材から絵の部分に変化した面積となったからです。
さらに画面を「絵に変化させて」行くために描き広げて行くと
描いた面積と視覚的な強さの関係は下の図の様になります。
実際に描いてみるとわかりますが、いったん描いた場所Aをより良くしようとする、
つまり視覚的な強さ(見応え感) a をより高くするにはAの周りBを描く必要があります。
Bまで描くと更にその外側Cへと自然に描き広げることで
a の見ごたえ感も高くなって行き制作に良い循環が生まれます。
この様に「描き広げて行く」ことはキャンヴァスや紙を画材から絵に変化させる
最も基本となる制作の仕方であると同時に ヴァルール や 絵の強さ の問題に関しても
確実かつ自然にクリアして行ける方法でもあります。
しっかりと描写された場所が画材や色とは感じさせない
絵としての部分になるのは、モチーフをちゃんと観て一生懸命描くことで
制作者の「ある一貫した観方と働きかけ」が反映される事によります。
図の中の A の部分は画面全体の引っ張り役として働く制作上での画面の中心です。
そして制作の成否は確固たる A を作ることが出来るかどうかに掛かっています。