美術への可能性
言葉のスケッチ
私が小学生の頃美術に接する機会はほとんどありませんでした。
九州天草に美術館は無く、図書館にはあったのだろう画集も視野の外でした。
それでも毎年学校でもらう美術の教科書は見ていて楽しい唯一の教科書だった様に思います。
ほとんどの中身は忘れてしまったけれど、或る年小さな図版に見入った絵が2枚ありました。
ピカソのゲルニカとジャコメッティーの人物画です。
当時私は美術に特別な関心があったわけではなく、
美術作品を見る感覚で見ていた訳ではなかったのを覚えています。
絵でも音楽でも何の先入観も無しに接するときが一番貴重です。
今になって思えばピカソのほぼ唯一の傑作がゲルニカですし、
ジャコメッティーの人物画も第一級の芸術作品に違いありません。
しかし、パッと見て美しく描かれたわけでもない絵を、
美術ファンでもない一小学生の眼が飽きずに眺める景色を思い浮かべてみると
そこに美術への可能性が重なっていた様な気がします。