ほんの少しの登り勾配
芸術論とひとりごと
これも随分昔から心がけていることの一つです。
元来アトリエにどれだけ居れるかが勝負の独り仕事が画家の在り方ですから
地味な毎日には慣れています。
制作の中インスピレーションに代表される思い付きやアイデアに飛びついて
手っ取り早い飛躍に目がくらんだこともありました。
当然ながら必然の無い制作内容は基礎工事のおろそかな建築物と同じ結果を招きます。
そうして今の今為すべきことを着実にこなしていくことが
一番の近道であることを失敗に学びました。
ほんの少しの登り勾配を歩み続ける事にはいくつかメリットがあります。
その中で最も大きいのは必然性の積み重ねによる作品の説得力だと思います。
生涯かけて着実に制作し続けた作品群は画家そのものの在り方として分厚い説得力を持ちます。
展覧会でよく目にする「○○回顧展」
素晴らしい作品を残した画家であれば、その軌跡を辿れる有意義な展覧会になっているはずです。
生涯の制作に一本筋の通った何かが感じられるのと同時に
彷徨しながらも常にほんの少しの登り坂を歩み続けたこともわかるはずです。
それぞれの人生に長い短いはあっても、巨匠達はみんなそうしています。