二人分の適量
言葉のスケッチ
野ネコのシャーはほぼ毎日ご飯を貰いにやって来る。
勝手知ったものでそろそろ来ているかな、と思い玄関扉を開けると
その気配に庭の方から姿を現す。
今日は後ろに3メートルばかり離れて未だ若い体格のキジ柄を背負った猫がいた。
そう言えばこの前、シャーにご飯をあげた後に足りたかなと思い
様子を見に行くとこの猫が一緒にいた。
また、独りで食べきれなかったキャットフードの番をする様に
その場を離れない日はこの子を待っていたのだろう。
なるほどそういう事ならとキャットフードを二人分にして出直すと先ずはシャーがお腹を満たす。
その傍で待つ友達は下の写真の子で余り近づくと逃げる所が若くても立派な野ネコである。
野ネコのシャーは推定4、5歳、友達は1歳位、
スタンドプレーが当たり前に思える猫達は、実は一人では生きられない動物なのだそうだ。
初対面には反射的にシャーッと吹くシャーはそのあと直ぐに「ビェーエー」と鳴いて訂正する。
きっと臆病なのだろう。
そんなシャーにようやく出来た若い友達は
それぞれがお互いに生きて行くための大切な存在に違いない。
今日も頃合いを見て様子を見に行くと土鍋の底は洗って戻された様にテカッとしていた。
「ちょっと少なかったかな」
食べきれない量のご飯は他の強い猫や狸に餌場として狙われる原因にもなる。
私は明日からのご飯の適量を空の土鍋に思い描いてみる。