元旦の朝
元旦の朝
いつもより早く目が覚めてアトリエに上がってみると日の出前の薄明かりが洩れている。
九十九里浜に初日の出を拝みに向かうのだろうか、窓外には時折り通り過ぎる車が見える。
静かな元旦の朝が昨日や明日の始まりと違うところは無いのだけれど人間さんは
何処までも境目のないのっぺらぼうな時間の流れを区切りタクトを入れる。
年、月、日、時、分、そして秒、、、、。
境目の無いものを色んな分別で捉えようとする試みは時間の概念に対しての
営みだけでなく画面の中でも同様に行われるものだ。
絵の偉大な所は全体集合を最初に固定して始める所にある。
キャンヴァスを用意する事は取り扱う全宇宙を最初に定義することに相当するし
その中で起こる現象は実際の宇宙で起こる事と相似でありまた相対的な関係である。
真っ白と真っ黒、真っ赤と真緑は絵の具が色と言う宇宙の端をつとめてくれる。
端を固定しその中に美しい相対関係を構築する事は
宇宙の中にもう一つの宇宙を創り出す試みなのかもしれない。
発明品も使う。
私の絵の中に無数に引かれる線達も実際には線ではなく、或る幅を持った溝である。
線は実際の宇宙には存在しないもので概念の代表、
人間さんの発明品の最たるものだろう。
そんなことを考えているといつの間にか霜の降りた畑にご来光が差している。
猫もやって来た、そろそろ細も目を覚ます。
来客も起き出して昨日より賑やかな元旦の朝が始まる。