春猫の風情
言葉のスケッチ
土筆が出たら蛙の合唱が聞けるようになりそろそろ桜も咲く。
春は今年もいつの間にかやって来た。
我が家の周りは緑が多いので冬の間は枯れ草色でシーンとしている。
そこに土の中で出番待ちをしていた緑たちが風船を膨らます勢いで一斉に芽吹く。
冬の間ネコ達が食べる草を探すのが大変でなかなか集まらなかったけれどこれからは大丈夫。
ちょうど彼らも衣替えの季節に差し掛かり抜け毛が多くなる。
そいつをグルーミングで舐めまわすとだいぶ飲み込んでしまう。
胃の中にたまった毛玉は大層胃もたれ胸焼けするそうだ。
毛玉と一緒に吐き出すために食べる草なのに中々好みがうるさくて、
以前、細に取りに行かせたら緑のカヤ葉を満面の笑みで持って来て
結局二度手間になってしまった。
ネコが好んで食べるのは、イネ科の雑草でちょっと甘い香りがする特別品である。
寝ている間に取ってきてプチサプライズしようと思っても
私がハサミを手に外に出ると帰りには玄関に並んで待っている。
ネコ族は大抵何でもわかっている。
都合の悪い時には気配さえし無いし、マグロケーキを冷蔵庫から出すと
既に後ろにスタンバイしている。
平和を愛し、いつも通りの中にちょっとした変化を求めるところがネコ。
我が家のネコ達がたまに見せる真剣な表情、
窓外を見やる哲学的な表情もしばらくすると欠伸にかき消され、伸びでごまかして終わる。
そんな猫のことを、どこかの作家が
「あらゆる動物達の中で唯一失敗のない生き物」と言っていたのを思い出す。
可とも不可とも言わないネコ達をながめながら、
右とも左ともならない文章になってしまった今日の私も
「うまく出来ているなー」そう思う午後です。