『色』 色の思い出
言葉のスケッチ
子供の頃に見た色は今より鮮やかだった気がする。
その中で鮮明な記憶となって残り、今も時折思い出されるのが
小学校2年生の時に見た海中の景色である。
夏休みの子供会イベントで初めてグラスボートに乗った時の事だった。
私の郷里は九州天草で海のきれいな所である。
実家から車で1時間ほどの所に富岡という町があり
突き出た岬町の周りの海は海中公園となっていて港からはグラスボートが出ていた。
船室の底はガラス張りで海中が見える。
海の中に見たのは初めて見る魚達や珊瑚礁の色の鮮やかさだった。
オレンジや朱や藍や紫やピンクがある映像は
恐らくこれまで見た色の最高彩度の世界だと思う。
一つには透明層(ガラス及び澄んだ海水)を通した効果
二つには海中に差す太陽光の効果
三つには私の眼球レンズが恐らく今より透明だった由
これらの条件が重なって見事な色彩の輝きを見る事ができた訳である。
今年の4月初めに帰郷した際立ち寄った港でフェリー乗り場の職員さんに
「グラスボートは無くなったけど、海中公園は今も綺麗ですか?」と聞いたら
「綺麗ですよ、ただ魚がいないきれいな海です。」と答えられ複雑な気持ちになった。
幼き同日もう一つ記憶に焼きついている光景がある。
傾いた陽にキラキラ輝く海面、港に帰る船と並走して泳ぐイルカ達。
そしてジャンプしたイルカが太陽の輪郭と重なった瞬間の光と陰がそれだ。
有難いことに天草は今もイルカが泳ぐ海で、イルカウォッチングが人気を博している。