昔話 18才の春 その4

1984年5月頃

何しろ画面を前に何が分らないのかがわからない、
そこにひたすらヤル気をぶつけるわけだから空回りの風車は良く回る。

先ずは時間を抱え込めるだけ抱え込んで
早朝アトリエから始めて夜20時まで制作の毎日を送ることにした。

毎朝同じ位置にある石膏像のブルータスを同じ場所から描く。
白い石膏像は私の画面の中で何度も描き直されとうに黒ずんでしまっている。
2週間ほど経った或る日、いつもの様に木炭を手に取って
木炭紙に向かうと木炭の粉が紙に付かず、はらはらと舞い落ちた。

木炭紙の表面は木炭が削れて付着する様に表面に凸凹がある。
指で触れてみると表面の凸凹が無くなっていた。

「あーっ、」声を上げた私は初めて
「画材と対話しなければならない」そう気が付いた。

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