【第21話】最初の鑑賞者
言葉のスケッチ
一日の仕事を終えぼーっと画面を眺めていたら、猫に「隙アリッ」とばかりに
膝の上に飛び乗られた。
アトリエに彼が居るときはお気に入りのCDをかけておとなしくしてもらっているが
どうやら制作を終えたことを察知したらしい。
仕業中は邪魔をしないことをいつの間にか学んで、
付き合いよく一日アトリエで過ごしてくれるネオは、
モデル兼話し相手そして絵の最初の鑑賞者でもある。
その時々の制作の様子を見ないようで見ている彼は猫的な感性を微妙な表情に表す。
私のテーマは人間さんだけでなくコミュニケーションが取れそうな生き物達全てに
適用させるつもりなので猫族代表としての感想を読み取れるのはありがたい。
猫は音楽にうるさいが、中々どうして絵の出来栄えにもその批評の目は厳しい。
一人一人(一猫一猫)の個性や思い込みを絡めてどういう絵が彼の頭の中に
感じ取られているのかは確かめる術も無いが
上手く出来上がった作品は「ぢーっ」と見てくれる。
数年前、丁度今日の様に膝の上に乗ったイオンは、
目の高さになった画面に描いてある絵の中の自分の毛を、
そーっと確かめる様に触ってみせたのを思い出す。