【第24話】光と絵と明るさと無限
言葉のスケッチ
視覚考察
まばゆい光の粒子達が冬の景色に降り注ぎ緑が一斉に萌葱ぐ。
今年も春がやってきた。
光の量が多い私の一番好きな季節である。
光のことは小さな頃からずっと気にしてきたが
それは私に「もの」を見せているのが光だからであろう。
またもう一歩踏み込んで考えてみると実際目にしているのは「ものそのもの」ではなく
一旦「もの」に当たって「反射された光」であることに気付く。
「もの」だけでも「光」だけでも「見える」と言う現象は成立しないが
「もの」に「光」が当り反射光が発生することによって「もの」と「光」の両方を同時に感覚することが可能になるわけだ。
また、絵においては描く前の真っ白な画面よりも
描かれた(情報量の多い)絵の方が脳にとって明るい。
これは光学的に明るくとも視覚情報が無ければ暗い(見えない)のと同じと言う事に拠る。
ここ数年私の個展においでになる多くの方が「前年より絵が明るくなった」と仰って下さる。
画面の中に織り込まれた情報が多くなれば、発生する光がより複雑に(多く)なりトータルとして画面はより明るく感じられよう。
同時に私の絵は下層の白の削り出し加減で描かれて行くので光学的にも明るさを増す。
沢山描けばより明るくなるが無限に沢山描いてはいけない。
いずれ描き始める前とそっくりの真っ白い画面に辿り着く事になるからである。
無限があることを認識するのは大切だが無限を相手にするのは愚かだ。
画面が真っ白くならない様に、白より明るい絵を目指し私の制作はつづく。