『座右の想定外』
今日などは疲労困憊の制作で今の時間になりました。
30年以上使い慣れた画材、絵の具を使って、
独自の工夫を凝らした制作法であっても
危険千万の綱渡り場面に遭遇することがあります。
出来上がってみればそんな場所を通った絵だなんて
気にもとめないし気が付きもしないのですが、
描き手しかわからない制作の機微があってそれは生涯に渡りついて回ります。
世の中に目を向けてみれば、
イレギュラーな場面に遭遇するとよく「想定外」という単語が登場しますね。
それまでは大層な態度でルール化していたのにあっさりと価値の掌を返す
その変わり身の早さにはいつも驚かされます。
画家は思考と制作現場を全く区別します。
熟練熟知熟達した画家が自分の制作をするのでさえ
遭遇してしまうイレギュラーの存在を最初から認めています。
想定外が発生することを予め想定するのは制作する上で当たり前の事です。
画家はとても謙虚なのです。
なのでこれもどこかで聞いた『思考実験』
なんて言う単語は、画家の辞書のどこを探しても見つからないわけです。