画面の端は物差し

芸術論とひとりごと

30年前修行を始めたばかりの頃の私は、構図が厄介なものだと思っていたので

大きな画面に、構図を気にせずモチーフを一番うまく描いた後にそれに合わせて

画面の大きさを決めた方が良いのではないかと考えた事がありました。

ところが実際にモチーフを描き込んで行くと必ず構図の問題に行き当たります。

 下図の様に同じ図は、画面の大きさ次第で鶏卵にもダチョウの卵にも見せることが出来ます。

※以下、グレーの紙を画面として見てみてください。

IMG07664 のコピー

IMG07666 のコピー

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同様に画面の矩形から受ける影響は下図の通りです。

IMG07668 のコピー

丸さ加減で言えば白い紙は中間くらいです。

二種類の矩形の紙を画面としてその中に置いてみると

IMG07669 のコピー

それぞれの中で、より丸く見えたり、その逆に見えたりします。

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実際に描いて実感したい方は、一辺20cmの正方形の紙と

半径11.3cmの丸い紙を用意して下さい(この寸法で両方の紙の面積はほぼ同じです)。

厚手のスケッチブックを切り抜いて鉛筆(3H~3B)で描きましょう。

それぞれに同じモチーフをデッサンしてみてください。

モチーフは、リンゴ一個をテーブルの上に置いた状態

大まかには下図の様な構図です。

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りんごの形は単純な様に見えてそうではありません。

よりリアルなリンゴの形にする為には、

画面の矩形を無視することは出来ないはずです。

さて、ここまで読まれた方は、「益々厄介なものだな」と思われるかもしれませんね。

ところが実際にはそうではありません。

『画面の大きさや矩形は構図を揺るぎないものにする為の物差し』となってくれるのです。

何も無い真っ白な紙やキャンヴァスにモチーフを描く際に

唯一手掛かりになるのが画面の矩形(画面の端)です。

絵画は相対的な関係で成り立つので、構図や色やそれぞれのモチーフの形など

イメージを明確化するために比較対象が必要です。

画面の端は終始その役割の根幹を果たしてくれます。

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