昔と今の有利と不利
芸術論とひとりごと
結論から先に言うと昔と今の有利と不利を比べてみれば
どっこいどっこいと言った気がします。
(ここで言う昔は大体ルネッサンス位までをイメージしています)
筆や膠など画材の面では段々良いものが手に入らなくなっていますが
ルネッサンス期と比べれば新しい顔料が発明されて色彩表現の幅が広がっているのも事実です。
『類型を好まず』が芸術世界ですから個性は大切です。
過去に一つの表現、個性が確立されると、
見かけ上未来に有り得る表現が一つ減ることになります。
表現や個性の総数はどれ位あるのかは分かりませんが、
私の場合は現在の表現方法にに至るまでに20年以上の時間を費やしました。
その過程で良く感じたのは、「よくもまあ、これ程までに完全に
個性の目が潰されているものだ」でした。
どういう事かと言うと、日々制作を続けて行く中で
自分独自の個性世界かもしれないと見込んで取り組んでいたことが、
ある時、過去の巨匠によって既に結論が成されていたと知ることです。
藪の中を彷徨い歩いて辿り着いた素敵な場所に
「西暦18○○年、画家○○此処に至る」の記念碑を見つける様なものです。
がっかりです。
もちろん更にその先を凌駕してやる事が出来れば良いのですが
芸術の個性は普遍的な個性でありその先は無い完全結論の世界です。
さて、今の方が有利な点は人の寿命が延びていること、
コンピューターの様なお助けマシンがあること。
画材は自分で作らなくても画材メーカーが作ってくれていること等があります。
寿命が長いと言う事はより沢山のTry & Errorを経験する時間があると言う事です。
絵の神様が、残りの総数が少なくなっている普遍的な個性に至るまで
「過去の巨匠たちに学びながらしっかり彷徨いなさい」と言っている様な気がします。