モチーフと目の関係

芸術論とひとりごと

モチーフを測ってはいけない

何故モチーフを測ってはいけないのか?

デッサンをするとき道具を使ってモチーフのポジションや寸法を測ろうとする光景を眼に
することがありますが以下の3つの理由により測ってはなりません。

1.正確に計測することは困難である。

手にもった道具でモチーフの位置や寸法を測ろうとしても角度や肘の伸ばし具合が
ほんの少し違っただけで測定値がちがってしまいます。

2.測った値を正しいと思い込んでしまう。

仮に正確に計測できたとしてみましょう。
測った値を正確だと思い込んでしまうと、それ以上の「美な位置、寸法」や「より正しく見える位置、寸法」を探そうとしない事が危惧されます。
画面の中で正しい位置は計測した位置と一致しません。
例えば同じ輪郭をつかってその中にかたちを描いたとしても
濃淡の使い加減、ヴァルール(その場所が有する明確な前後位置感)などによって
正確に見える位置は変わってきます。

常に画面の現状に眼を配り「より」美な位置を探す眼を大切にしましょう。

3.片目で見た寸法

測る時には片目で測りますね、普段両目で見ている形と片目で見た形は違います。
モチーフが遠くに在る場合には気が付きにくいですが近くに置いて右目だけと左目だけで見てみれば違いがわかります。
両目で見た正確なデッサンを描くのに片目で見た寸法をあてにするのはナンセンスです。

両目で見ること、片目で見ること

手近に置いたモチーフを正確に描写してみようと思うときに問題になるのが
「右目で見たかたちと左目で見たかたちのどちらを描けばいいのか」という事です。
写真はそれぞれ手の届くほどの距離に置いた物を左右の目でそれぞれ見たときに見える様子です。
背景にカレンダーを置いのは、背景との関係まで変わってくるということに気が付いてもらう為です。

左目だけで見たところ

右目だけで見たことろ

必死になって描いているうちに大抵は利き目の影響が出て、利き目で見たかたちに近いところで描かれて行きますが、画面の中で起こるその他の力学(画面の大きさ、矩形、ヴァルールなど)によってもっとも美な位置状態に定位していきます。

余談ですが人間の目は、左右それぞれで見たかたちの違いの大きいものを近くにあると認識し、違いの小さいものを遠くにあると認識します。
両目で見たかたちの違いを無意識に利用しているわけです。

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